行政書士に報酬を支払った場合の源泉徴収と支払調書とマイナンバー

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こんにちは。税理士のかわべです。

行政書士に報酬を支払った場合、一般的な行政書士の仕事であれば源泉徴収の必要もなく支払調書を作成する必要もありません。支払調書を作成しないので、行政書士からマイナンバー(個人番号)を収集する必要もないのですが・・・。

今日は行政書士の源泉徴収と支払調書の作成について記載します。

R2.7.23 記事を加筆・訂正しました。

(H28.11.18追記) この記事で取り扱っている内容は『実務と法の微妙なズレ』を含んでいます。 行政書士の先生によっては、慣例的に源泉徴収税額を計算し請求書を作成している先生もいらっしゃるようです。「法律」の解釈としては「?」と思う取り扱いですが、この取り扱いをもとに毎年、確定申告もしているという実態があるようです。 同じような問題は、IT系の個人事業主にもあります。 ソフトウェアの制作の仕事は、原則、源泉徴収の必要はありません(※)が、デザインを含む場合は、デザイナーと同じ取り扱いとなり源泉徴収が必要です。しかし、実務では『仕事内容がソフトウェアの制作か、デザインなのか』をいちいち確認するのが大変なので、慣例的にすべての報酬で源泉徴収をしているという実態があります。 意外と微妙な問題となります。 源泉徴収をしないと当局から指摘を受けるが、支払う側と受け取る側の合意に基づく「源泉徴収し過ぎ」はスルーされるということですね(私見)。 参考にしていただければ幸いです。 ※ 法令出版株式会社「平成30年版 源泉所得税相談事例集」(平成30年発行)より (画像をクリックするとAmazonへ)
この記事は平成28年11月14日現在で確認することができる情報に基づいて記載されています。

行政書士に報酬を支払った場合

行政書士に報酬を支払った場合の源泉徴収と支払調書

行政書士に報酬を支払った場合、その報酬が行政書士の一般的な業務に関する報酬である場合は、所得税法第204条第1項に規定する報酬には該当しませんので、源泉徴収の必要はありません。また、支払調書を作成する必要はありません。

国税庁「行政書士に報酬を支払った場合」
【紹介要旨】当社は行政書士に対し、官庁への提出書類作成料として報酬を支払っていますが、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出は必要ですか。
【回答要旨】原則として、提出する必要はありません。  一般的に行政書士の業務に関する報酬については、所得税法第204条第1項に規定する報酬には該当しませんので、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出する必要はありません。  しかし、例えば、依頼した業務が建築基準法第6条等に定める「建築に関する申請若しくは届出」の書類の作成のような場合には、その業務が建築代理士の行う業務に含まれるため、支払調書の提出が必要になります。

行政書士に報酬を支払って源泉徴収が必要な場合

上記のとおり、「一般的な行政書士の業務に関する報酬」については、源泉徴収も支払調書の作成も必要ありませんが、「依頼した業務が建築基準法第6条等に定める「建築に関する申請若しくは届出」の書類の作成のような場合」には、その業務が建築代理士の行う業務に含まれるため、行政書士に報酬を支払った場合であっても源泉徴収と支払調書の作成が必要となるので、注意が必要です。

法令等

法令等を確認しておきます。

所得税法

所得税法(昭和四十年法律第三十三号)
施行日: 令和二年一月一日
最終更新: 平成三十一年三月二十九日公布(平成三十一年法律第六号)改正

所得税法 第204条の一部、第205条
(源泉徴収義務) 第二百四条  居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。 (中略) 二  弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金 (以下、省略)
(徴収税額) 第二百五条  前条第一項の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号の区分に応じ当該各号に掲げる金額とする。 一  前条第一項第一号、第二号、第四号若しくは第五号又は第七号に掲げる報酬若しくは料金又は契約金(次号に掲げる報酬及び料金を除く。) その金額に百分の十(同一人に対し一回に支払われる金額が百万円を超える場合には、その超える部分の金額については、百分の二十)の税率を乗じて計算した金額 二  前条第一項第二号に掲げる司法書士、土地家屋調査士若しくは海事代理士の業務に関する報酬若しくは料金、同項第三号に掲げる診療報酬、同項第四号に掲げる職業拳闘家、外交員、集金人若しくは電力量計の検針人の業務に関する報酬若しくは料金、同項第六号に掲げる報酬若しくは料金又は同項第八号に掲げる賞金 その金額(当該賞金が金銭以外のもので支払われる場合には、その支払の時における価額として政令で定めるところにより計算した金額)から政令で定める金額を控除した残額に百分の十の税率を乗じて計算した金額
e-Gov法令検索所得税法>204条より。令和2年7月23日引用。)

上記引用部分の所得税法204条1項二号のとおり、「行政書士」は、法の条文に規定がありません。しかし、「その他これらに類する者で政令で定めるものの業務」という文言がありますので、次にその文言について確認しておきます。

所得税法施行令

「その他これらに類する者で政令で定めるものの業務」について法人税法施行令の320条に規定されています。

所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)
施行日: 令和二年四月一日
最終更新: 平成三十一年三月二十九日公布(平成三十一年政令第九十五号)改正

所得税法施行令 第320条
(報酬、料金、契約金又は賞金に係る源泉徴収) 第三百二十条  法第二百四条第一項第一号(源泉徴収義務)に規定する政令で定める報酬又は料金は、テープ若しくはワイヤーの吹込み、脚本、脚色、翻訳、通訳、校正、書籍の装てい、速記、版下(写真製版用写真原板の修整を含むものとし、写真植字を除くものとする。)若しくは雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬若しくは料金、技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料、技芸、スポーツその他これらに類するものの教授若しくは指導若しくは知識の教授の報酬若しくは料金又は金融商品取引法第二十八条第六項(通則)に規定する投資助言業務に係る報酬若しくは料金とする。 2 法第二百四条第一項第二号に規定する政令で定める者は、計理士、会計士補、企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含む。)、測量士補、建築代理士(建築代理士以外の者で建築に関する申請若しくは届出の書類を作成し、又はこれらの手続を代理することを業とするものを含む。)、不動産鑑定士補、火災損害鑑定人若しくは自動車等損害鑑定人(自動車又は建設機械に係る損害保険契約(保険業法第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社若しくは同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約又は同条第十八項に規定する少額短期保険業者の締結したこれに類する保険契約をいう。)又はこれに類する共済に係る契約の保険事故又は共済事故に関して損害額の算定又はその損害額の算定に係る調査を行うことを業とする者をいう。)又は技術士補(技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者を含む。)とする。
(以下、省略)
e-Gov法令検索所得税法施行令>320条より。令和2年7月23日引用。)

行政書士については、ここでも規定されていません。

このことから行政書士としての業務についての報酬については、源泉徴収も支払調書の作成も必要ないということになるのですが、国税庁の質疑応答事例に記載されているとおり、行政書士であっても上記の政令に定めるような業務をした場合の報酬が発生すれば、源泉徴収と支払調書の作成が必要となります。


■□◆◇ 編集後記 ◇◆□■

今日の関東は暖かいです。関東ではスーパームーンを見ることはできないかも知れません。