医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額等の試算(平成29年分)

平成29年分-医療費控除とセルフメディケーション税制-アイキャッチ

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こんにちは。税理士のかわべです。

[aside type=”boader”]【H31.1.16追記】残念ながらこの記事で取り扱っている比較・検討できるシステムは削除されてしまったようです。(ページは存在しますが、試算できるフォーマットはありません。)

また、記事中の「平成29年分の確定申告特集」のリンク先は、平成30年分に変更されています。[/aside]

平成29年分の所得税から「[keikou]セルフメディケーション税制[/keikou]」の適用が始まり、平成29年分の所得税の確定申告書を作成する場合に「セルフメディケーション税制」と従来の「医療費控除」のどちらかを[emphasis]選択して適用すること[/emphasis]になります。

どちらが有利となる(減税額等が多くなる)のでしょうか?

国税庁のサイトに給与所得者用の試算ページ(LINK;平成29年分確定申告特集重要なお知らせ[医療費控除が変わります])が開設されていますので、比較・検討してみました。

関連記事 平成29年分の所得税の医療費控除に関する明細書のイメージが公開されました

[aside type=”lime”]!!! 還付申告できる期間 !!!
所得税の確定申告書を提出する義務のない人が、給与等から源泉徴収された所得税額の還付を受けるための申告(還付申告)を提出できる期間については、国税庁の次のサイトでご確認ください。

LINK 国税庁;No.2035 還付申告ができる期間と提出先 web[/aside]

[aside type=”yellow”]この記事は平成30年1月22日時点で確認することができる法令等に基づき作成されています。サイトの仕様変更、法令等の改正があった場合は、記事内容と手続き内容等が相違することもありますのでご注意ください。[/aside]


医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額等の試算サイト(給与所得者用)

繰り返しになりますが、医療費控除とセルフメディケーション税制は[emphasis]選択適用[/emphasis]となります。

どちらが有利になる(減税額等が多くなる)のかは、その人の[keikou]所得、医療費の総額、医療費に占めるセルフメディケーション税制対象医薬品(スイッチOTC医薬品)の購入額など[/keikou]によって異なるため一概には言えません。それぞれが自分で判断するしかありません。

平成29年分の所得税の確定申告については、サラリーマン(給与所得者)で、他に所得がない人のために国税庁が給与所得者用の試算サイトを公開しているので、比較・検討してみてください。

[aside type=”pink”]セルフメディケーション税制の適用を検討する場合、一定の取組(予防接種、健康診断、人間ドックなど)の費用を[emphasis]含めない[/emphasis]ように注意してください。[/aside]

LINK 国税庁;平成29年分確定申告特集重要なお知らせ[医療費控除が変わります]

平成29年分-医療費控除とセルフメディケーション税制-11

なお、この試算ページで必要事項を入力し「計算する」をクリックすると「減税額等は概算です」というメッセージが表示されます。

「実際の減税額は、他の所得等及び所得控除の金額等によって異なります」ということですので、あくまでも概算と割り切って利用してみてください。(下の画像の赤色の枠囲み部分。)

平成29年分-医療費控除とセルフメディケーション税制-13

医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額等の比較・検討

さっそく国税庁の平成29年分確定申告特集重要なお知らせ[医療費控除が変わります]で公開している試算システムを利用していくつかの具体例で医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額等を比較・検討してみました。

平成29年の給与収入が320万円、扶養親族等の数が「0」のケース

最初に平成29年の給与収入が320万円で配偶者や扶養親族がいないケース(扶養親族等の数が「0」となるケース)を確認します。

平成29年の給与収入が320万円となるケースでは、医療費控除を計算する際に医療費の総額から控除する金額は[emphasis]10万円[/emphasis](※)となります。

※ 一般的に「10万円以上の医療費があれば医療費控除の適用が・・・」と言われるのはこのためですが、正確には次のとおり[keikou]総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額[/keikou]となります。10万円とは限らないので注意が必要です。(下の画像の赤色の枠囲み部分。)

平成29年分-医療費控除とセルフメディケーション税制-12

(国税庁;No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)より。枠囲みは筆者追記。)

この「平成29年の給与収入が320万円のケース」で医療費の総額等を想定し試算してみました。

平成29年中に支払った医療費の総額が20万円のケース

最初に平成29年中に支払った医療費の総額が20万円(保険金等で補填される金額「0」、セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額10万円)のケースで試算しました。結果は次のとおり。「通常の医療費控除」制度を適用した場合の方が、減税額が多くなりました。

平成29年分-医療費控除とセルフメディケーション税制-15

● セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を15万円にした場合

同じ設定でセルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を15万円に増やした場合、結果は次のようになりました。

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セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額が10万円のケースと結果は変わりません。これは[keikou]セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額が10万円以上の場合、控除額はセルフメディケーション税制の控除額の上限の88,000円[/keikou]となるためです。

減税額はその人の課税所得に応じて適用される税率によって異なります。

LINK 国税庁;No.2260 所得税の税率

● セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を1万5千円にした場合

同じ設定で今度は、セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を1万5千円に減らしてみました。結果は次のとおりです。

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このケースでもセルフメディケーション税制対象医薬品の購入額が10万円のケースと結果は変わりません。

平成29年中に支払った医療費の総額が12万円のケース

次に平成29年中に支払った医療費の総額が12万円(保険金等で補填される金額「0」、セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額10万円)のケースを試算しました。結果は次のとおり。「通常の医療費控除」制度を適用した場合の方が、減税額が多くなりました。

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● セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を6万円にした場合

同じ設定でセルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を6万円に減らした場合、結果は次のようになりました。

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セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額が10万円のケースと結果は変わりません。

● セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を3万2千円にした場合

同じ設定で今度は、セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を3万2千円に減らしてみました。結果は次のとおりです。

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このケースでは、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額が同じ千円となるため、どちらを適用しても所得税等の額に与える影響は変わらないことになります。

平成29年の給与収入が320万円のケースのまとめ

繰り返しになりますが、平成29年の給与収入が320万円のケースで医療費から控除する金額は10万円となります。この「医療費から控除する金額が10万円」のケースでは、おおむね次のな検討結果となりました。

[aside type=”sky”](A) 医療費の総額-10万円

(B) セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額-12,000円

(どちらも保険金などで補填される金額を差し引いた後の金額とする。)

⇒ (A)と(B)がどちらも0円以下のケース・・・どちらも選択できない

⇒ (A)>(B)で(A)が1円以上のケース・・・通常の医療費控除を選択

⇒ (A)=(B)のケース・・・どちらを選択しても同じ

⇒ (A)<(B)で(A)が87,001円~89,000円まで・・・どちらを選択しても同じ

⇒ (A)<(B)で(A)が89,001円以上のケース・・・通常の医療費控除を選択

⇒ (A)<(B)で(A)が87,000円以下で(B)が1円以上のケース・・・セルフメディケーション税制を選択

!!! 課税所得の計算、税額の計算では端数処理があるため、控除額が1円~999円では税額に影響がないケースもあります。 !!![/aside]

 

平成29年の給与収入が156万円、扶養親族等の数が「0」のケース

次に平成29年の給与収入が156万円で配偶者や扶養親族がいないケース(扶養親族等の数が「0」となるケース)を確認します。

平成29年の給与収入が156万円となるケースでは、医療費控除を計算する際に医療費の総額から控除する金額は[emphasis]45,500円(総所得金額等91万円の5%の金額)[/emphasis](※)となります。

(※)給与収入が156万円の場合、給与所得控除65万円を控除した91万円が給与所得となります。この記事では、他に収入がないことを想定しているため、総所得金額等は、給与所得の91万円だけとなります。

平成29年中に支払った医療費の総額が6万円のケース

最初に平成29年中に支払った医療費の総額が6万円(保険金等で補填される金額「0」、セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額3万円)のケースで試算しました。結果は次のとおり。「通常の医療費控除」制度を適用した場合の方が、減税額が多くなりました。

平成29年分-医療費控除とセルフメディケーション税制-27

● セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を2万6千円にした場合

同じ設定でセルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を2万6千円に減らした場合、結果は次のようになりました。

平成29年分-医療費控除とセルフメディケーション税制-29

この場合、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額が同じとなりました。

● セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を1万6千円にした場合

同じ設定で今度は、セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額を1万6千円に減らしてみました。結果は次のとおりです。

平成29年分-医療費控除とセルフメディケーション税制-31

このケースでは、通常の医療費控除の減税額が多くなりました。

平成29年の給与収入が156万円のケースのまとめ

繰り返しになりますが、平成29年の給与収入が156万円のケースで医療費から控除する金額は45,500円(総所得金額等の5%に相当する金額)となります。

このケースではおおむね次のような検討結果となりました。

[aside type=”sky”](A) 医療費の総額-総所得金額等の5%

(B) セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額-12,000円

(どちらも保険金などで補填される金額を差し引いた後の金額とする。)

⇒ (A)と(B)がどちらも500円以下のケース・・・どちらも選択しても減税額は0円

⇒ (A)>(B)で(A)が501円以上のケース・・・通常の医療費控除を選択

⇒ (A)=(B)のケース・・・どちらを選択しても同じ

⇒ (A)<(B)で(A)が87,501円~89,500円まで・・・どちらを選択しても同じ

⇒ (A)<(B)で(A)が89,501円以上のケース・・・通常の医療費控除を選択

⇒ (A)<(B)で(A)が87,500円以下で(B)が501円以上のケース・・・セルフメディケーション税制を選択

!!! 課税所得の計算、税額の計算では端数処理があるため、控除額が1円~999円では税額に影響がないケースもあります。 !!![/aside]

 

まとめ

医療費控除とセルフメディケーション税制との比較は、総所得金額等の違いで傾向を見極めなければなりません。総所得金額等が200万円以上の場合、医療費の総額から控除する金額が10万円、総所得金額等が200万円未満の場合、医療費の総額から控除する金額が総所得金額等の5%となることから、試算ページ等を利用して、どちらが減税額が多くなるかを検討して、確定申告書の作成作業に取り掛かった方が良いでしょう。

LINK 国税庁;平成29年分確定申告特集重要なお知らせ[医療費控除が変わります]

[lnvoicer icon=”https://ar-kawabe.com/blog/wp-content/uploads/2015/06/1527_Ako_NC_31.jpg” name=”管理人”]私が利用している税額計算システムで検証したところ、減税額が試算ページと一致しないケースがありました。

端数処理の影響かと思います。

年末調整を受けている人は、100円程度の減税額の場合、手間を考えた場合はやらないという選択肢もありかも知れませんね。[/lnvoicer]

 

おまけ セルフメディケーション税制のリンク

セルフメディケーション税制については、次のLINK先でご確認ください。

[aside type=”boader”]
LINK 国税庁;No.1131 セルフメディケーション税制と従来の医療費控除との選択適用

LINK 国税庁;No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】[/aside]


■□◆◇ 編集後記 ◇◆□■

 先週、「新潟は大雪のようです。」と編集後記に書きましたが、今日は東京に大雪が・・・。交通への影響が心配です。