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こんにちは。税理士のかわべです。
国税庁のサイトに東京国税局の「令和2年度 査察の概要」が公開されているので読んでみました。
この記事は、令和3年6月に国税庁(東京国税局)から発表された資料を参考に、過去の記事をリライトしたものです。
● 参考 国税庁;東京国税局 令和2年度 査察の概要 PDF
● 参考 国税庁;東京国税局 令和元年度 査察の概要 PDF
● 参考 国税庁;東京国税局 平成30年度 査察の概要 PDF
● 参考 国税庁;東京国税局 平成29年度 査察の概要 PDF
● 参考 国税庁;平成28年度 査察の概要 PDF
● 参考 国税庁;平成27年度 査察の概要 PDF
● 参考 国税庁;パンフレット「税務手続について(国税通則法等の改正)」 PDF
● 参考 国税庁;平成26年度 査察の概要 Web
● 参考 国税庁;平成25年度 査察の概要 Web
● 参考 国税庁;平成24年度 査察の概要 Web
● 参考 国税庁;平成23年度 査察の概要 Web
● 参考 国税庁;平成22年度 査察の概要 Web
● 参考 国税庁;平成21年度 査察の概要 Web
目次 表示
税務調査と査察の違い
「令和2年度 査察の概要」を読む前に、「税務調査」と「査察」制度を混同している人がいるので、違いを確認しておきます。
税務調査とは
税務調査は申告の内容を確認する調査です。(以下の画像を参照してください。)
「内容の確認」ですので、誰でも受ける可能性があります。
[lnvoicer icon=”https://ar-kawabe.com/blog/wp-content/uploads/2015/06/1527_Ako_NC_31.jpg” name=”管理人”]「税務調査」はいつ受けることになるのかわかりません。一般的に黒字営業を継続している法人に対する調査は「3年から5年の間に定期的に行われる」と言われています。
いつ「税務調査」を受けるかわかりませんが、まじめに帳簿を作成し、適法な申告を心がけていれば、恐れることはありません。[/lnvoicer]
査察とは
「査察」制度は、次のとおり「悪質な脱税者に対して刑事責任を追及」するために行われる調査です。
年間で査察の着手件数は200件弱(コロナの影響なのか令和元年度のは150件、令和2年度は111件でした。「 令和2年度 査察の概要 」より)ですので、多くの人には関係ない制度かと思います。悪質な脱税をしていなければ査察を受けることはないでしょう。
[lnvoicer icon=”https://ar-kawabe.com/blog/wp-content/uploads/2015/06/1527_Ako_NC_31.jpg” name=”管理人”]税理士でも査察に立ち会った経験のある人は少ないかと思います。(毎回、書いていますが、私も査察に立ち会った経験はありません。)先日、査察に関連する調査としてクライアントが税務調査を受けたという税理士の先生の話をお聞きすることができました。あまり詳しくは書きませんが、1社で脱税を企てるのではなく、複数の法人で脱税をするという手の込んだ手法だったようです。
複数の法人で罪を犯せば、それだけ露見する確率は上がると思うのですが……。[/lnvoicer]
税務調査を受ける機会が少なくなるかも?書面添付制度について
上記のとおり、税務調査は「申告の内容を確認するためのもの」ですが、できれば税務調査をうけたくないと思う人は多いかと思います。(やましいところがなくても何となく嫌なものです。)
そのような人向けだと思いますが、「税務調査を受ける機会が少なくなる可能性がある制度」(筆者の造語)が、平成13年度の税理士法の改正により創設されました。
「書面添付制度」と言われています。
この「書面添付制度」は、申告書に「税理士がその申告書等を作成するときに納税者と打ち合わせた事項、計算過程等」を記載した書面を添付する制度です。
税理士に依頼をしなければいけませんが、この書面添付制度を利用することにより、税務調査を受ける機会が少なくなる可能性があります。(いつか記事にしてみようと思いますが、私もこの制度を利用していますが、件数としては少ないです。)
■ LINK 国税庁;4 書面添付・意見聴取制度 Web
税務調査は、調査の実施日(1日~)以外にも資料を準備するなど、少なくても2日程度は時間をとられます。また、税務調査の結果が出るまでには、小規模な企業で1ヶ月半ぐらはかかります。
税務調査を受けなければ、調査のためのとられる時間をほかのことに充てられますので、顧問の税理士に書面添付制度の件を相談してみてはいかがでしょうか?(書面を作成するのに意外と時間がかかりますので、別途、報酬が発生すると思います。顧問税理士に良く確認してください。)
令和2年度の査察の概要を読んでみる
前置きが長くなりましたが、「 令和2年度 査察の概要 」を読んで、感じたことを記載しておきます。
重要事案への取組
「 令和2年度 査察の概要 」も前年までの査察の概要と同じく、1ページ目に概要が掲載され、集計表は後ろの方に掲載される形式でまとめられています。
2ページ目以降に「2 重点事案への取組」が記載されていますので、確認していきます。
● 消費税受還付事案
● 無申告ほ脱事案
● 国際事案
● その他の社会的波及効果の高い事案
消費税事案
消費税の輸出免税制度を利用した事例が掲載されています。
令和2年度の告発件数は18件とここ5年間では最小で、コロナの影響も大きいのかも知れません。平成30年度の告発件数が41件とかなり多かったことがわかります。
消費税の輸出免税を利用した悪質な脱税のケースは多いようですね。
「 令和2年度 査察の概要 」 には、上の画像のとおり、金地金の消費税不正受還付事案が掲載されていますが、「令和元年度 査察の概要」には架空の宝飾品の案件が掲載され、いろいろな事案があるようでね。今年も別の業種での事案の報道もありました。
無申告ほ脱事案
無申告のほ脱事案として、測量会社とコンサルタント会社の事案が掲載されています。
無申告はやっぱり悪質ですよね。申告という納税者の性善説に基づいた制度なので、無申告は許しがたいです。
国際事案
国際事案が掲載されています。
国際事案についての告発件数は、平成29年度に減少していますが、その後は年々増え続けているという印象です。
消費税の不正受還付事案がこちらにも掲載されています。(かなり多いのかも知れませんね。)
その他の社会的波及効果の高い事案
意外な分野の脱税が掲載されています。
トピック6は、生活困窮者を救うという意味で社会的意義が大きいかと思いますが、残念ですね。
着手・処理・告発件数、告発率の状況
令和2年度 査察の概要 によると、すでに触れていますが、令和2年度の着手件数はここ5年間では一番少なく、処理件数や告発件数もここ5年間で最少となっています。
着手件数は、コロナの影響でしょうね。告発率が上がっていることから、手広くではなく、重要案件に的を絞って着手しているという傾向かも知れません。(着手と告発には、当然、時間的な乖離がありますので、一概にはそのような傾向と言えないかと思いますが。)
脱税額の状況
令和2年度の告発分の脱税額の総額は令和元年に続き、比較的少ない金額です。
総額のうち1件あたりの脱税額が83百万円(8千3百万円)と昨年(8千万円)とあまり変わらないことから、1件あたりの脱税額は少なくなる傾向なのかも知れません。
告発の多かった業種
令和2年度は、不動産業が告発事案が多かったようです。(建設業と不動産業のツートップは変わらないという印象ですね。)
不正資金の留保状況及び隠匿場所
不正資金の隠匿場所は、あいかわらず身近な場所です。
平成29年度の記事に「仮想通貨を購入する人はいないのだろうか?」と記載しましたが、平成30年度の査察の概要で「暗号資産(仮想通貨)」との記載があり、令和元年度の査察の概要では記載がなかったのですが、令和2年度には記載があることから、これからは増えてくるのかもかも知れません。
まとめ
脱税の事案を知っておくのも経営者として誤った道に進まないために必要なことかも知れません。
■□◆◇ 編集後記 ◇◆□■
週末は表参道へ。すごい人でした。