ひとり親、寡婦の確認チャート(令和2年分、オリジナル)

こんにちは。税理士のかわべです。
年末調整や所得税の確定申告で、納税者本人がひとり親や寡婦に該当するかどうかを確認するためのチャートを作成してみました。
また、この記事は令和2年9月28日時点で確認することができる法令等に基づき作成しています。法令が改正された場合は、記事内容と異なる取り扱いとなりますので、摘要年度ごとの要件等は、国税庁の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
参考 国税庁;No.1171 ひとり親控除 web
参考 国税庁;ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ(源泉所得税関係) (令和2年5月) PDF
参考 国税庁;No.1170 寡婦控除 web
参考 国税庁;令和2年分 年末調整のしかた web
参考 e-Gav;所得税法(昭和四十年法律第三十三号)【施行日:令和二年四月一日、最終更新:令和二年三月三十一日公布(令和二年法律第八号)改正】 web
参考 e-Gav;所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)【施行日:令和二年四月一日、最終更新:令和二年三月三十一日公布(令和二年政令第百十一号)改正】 web
目次
ひとり親控除、寡婦控除の要件
オリジナルチャートを確認するまえに、ひとり親(控除)と寡婦(控除)の要件等を国税庁のサイトを参考に確認しておきます。
ひとり親とは?
「ひとり親」とは、納税者本人がその年の12月31日の現況で婚姻をしていないこと又は配偶者の生死が明らかでない一定の人のうち次の画面の3つの要件を全て満たす人です。
寡婦とは?
寡婦とは、納税者本人がその年の12月31日の現況でひとり親に該当せず、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない人で次の画面の(1)と(2)のいずれかの要件に当てはまる人です。
ひとり親、寡婦の判定に必要な用語の解説
上記のとおり、寡婦、特別の寡婦、寡夫の判定には、『扶養親族』、『生計を一にする子』、『合計所得金額』など専門的な用語が出てきます。
それぞれに意味(定義)があり、なかなか難しいのですが、重要ワードとして以下にちょっとだけ説明しておきます。
扶養親族とは?生計を一にするとは?
『扶養親族』については、令和2年分 年末調整のしかたに説明が記載されていますので、引用しておきます。
扶養親族は、大きく2つの要件を満たす必要があります。
● 合計所得金額が48万円以下の人
生計を一にする
「生計を一にする」については、令和2年分 年末調整のしかたの扶養親族の注意事項にも記載がありますが、国税庁の確定申告関連のページの説明も引用しておきます。
「生計を一にする」については、個々のレアなケースまでを網羅して解説しようとした場合は、それだけで一冊の本が書けるぐらい難しいものです。不明点がある場合は、税務署などに相談することをおすすめします。
合計所得金額とは?
合計所得金額とは、ざっくり説明すると『その年の収入から経費等を差し引いた所得の合計額』ということになりますが、国税庁のページを参照してみてください。
ひとり親、寡婦を確認するためのオリジナルチャート
● オリジナルチャートの作成には細心の注意を払っていますが、実際に税務申告等の参考にされる場合は自己責任でお願いいたします。
● 「収入と合計所得の違い」や「生計を一」については、判断が難しいケースもありますので、疑問がある場合は、最寄の税務署等で確認してください。
ひとり親に該当するかどうかを確認するためのチャート
国税庁のNo.1171 ひとり親控除と、令和2年分 年末調整のしかたのを参照しながらご確認ください。
(1)婚姻をしていない人と(2)配偶者の生死のあきらかでない人に分けてチャートを作成してみました。
婚姻をしていない人
配偶者の生死の明らかでない人
チャートのなかに出てくる「政令」については、所得税法施行令11条の2を参照してみてください。(この記事の最後のにも条文を掲載しています。)
寡婦に該当するかどうかを確認するためのチャート
国税庁のNo.1170 寡婦控除と、令和2年分 年末調整のしかたのを参照しながらご確認ください。
先にひとり親に該当するかどうかを確認してください。
(1)夫と離婚した人と(2)夫と死別した人または夫の生死の明らかでない人の2つに分けてチャートを作成してみました。
夫と離婚した人
夫と死別した人または、夫の生死の明らかでない人
夫の生死の明らかでない人については、チャートのなかで「政令」について確認するQがありますが、所得税法施行令11条を参照してみてください。(この記事の最後のにも条文を掲載しています。)
まとめ
ひとり親控除、寡婦控除は、ご本人の収入、ご家族の状況等により適用の可否が異なりますので、慎重に判断する必要があります。12月31日時点で判断しなければならないことも見落としやすいので注意しましょう。
条文
所得税法と所得税法施行令の条文を引用しておきます。
所得税法
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
三十 寡婦 次に掲げる者でひとり親に該当しないものをいう。
イ 夫と離婚した後婚姻をしていない者のうち、次に掲げる要件を満たすもの
(1) 扶養親族を有すること。
(2) 第七十条(純損失の繰越控除)及び第七十一条(雑損失の繰越控除)の規定を適用しないで計算した場合における第二十二条(課税標準)に規定する総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額(以下この条において「合計所得金額」という。)が五百万円以下であること。
(3) その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者として財務省令で定めるものがいないこと。
ロ 夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、イ(2)及び(3)に掲げる要件を満たすもの
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
三十一 ひとり親 現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、次に掲げる要件を満たすものをいう。
イ その者と生計を一にする子で政令で定めるものを有すること。
ロ 合計所得金額が五百万円以下であること。
ハ その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者として財務省令で定めるものがいないこと。
所得税法施行令
(寡婦の範囲)
第十一条 法第二条第一項第三十号ロ(定義)に規定する夫の生死の明らかでない者で政令で定めるものは、次に掲げる者の妻とする。
一 太平洋戦争の終結の当時もとの陸海軍に属していた者で、まだ国内に帰らないもの
二 前号に掲げる者以外の者で、太平洋戦争の終結の当時国外にあつてまだ国内に帰らず、かつ、その帰らないことについて同号に掲げる者と同様の事情があると認められるもの
三 船舶が沈没し、転覆し、滅失し若しくは行方不明となつた際現にその船舶に乗つていた者若しくは船舶に乗つていてその船舶の航行中に行方不明となつた者又は航空機が墜落し、滅失し若しくは行方不明となつた際現にその航空機に乗つていた者若しくは航空機に乗つていてその航空機の航行中に行方不明となつた者で、三月以上その生死が明らかでないもの
四 前号に掲げる者以外の者で、死亡の原因となるべき危難に遭遇した者のうちその危難が去つた後一年以上その生死が明らかでないもの
五 前各号に掲げる者のほか、三年以上その生死が明らかでない者
(ひとり親の範囲)
第十一条の二 法第二条第一項第三十一号(定義)に規定する配偶者の生死の明らかでない者で政令で定めるものは、前条各号に掲げる者の配偶者とする。
2 法第二条第一項第三十一号イに規定する政令で定める子は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が四十八万円以下の子(他の者の同一生計配偶者又は扶養親族とされている者を除く。)とする。
■□◆◇ 編集後記 ◇◆□■
昨年は作成しなかったこの記事に掲載したチャートですが、ひとり親と寡婦の2つに整理されたことから令和2年分として作成しました。
チャートを作成していて感じたのは、以前の制度よりわかりやすい(寡婦も寡夫の混乱もない)制度だと思いますが、令和元年まで特別の寡婦や寡夫に該当していた人の確認は、慎重にならざるを得ませんね。