この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
こんにちは。税理士のかわべです。
国税庁のサイトに東京国税局の「平成30年度 査察の概要 PDF」が公開されていますので読んでみました。
参考 国税庁;東京国税局 平成30年度 査察の概要 PDF
参考 国税庁;東京国税局 平成29年度 査察の概要 PDF
参考 国税庁;平成28年度 査察の概要 PDF
参考 国税庁;平成27年度 査察の概要 PDF
参考 国税庁;パンフレット「税務手続について(国税通則法等の改正)」 PDF
参考 国税庁;平成26年度 査察の概要 Web
参考 国税庁;平成25年度 査察の概要 Web
参考 国税庁;平成24年度 査察の概要 Web
参考 国税庁;平成23年度 査察の概要 Web
参考 国税庁;平成22年度 査察の概要 Web
参考 国税庁;平成21年度 査察の概要 Web
目次 表示
税務調査と査察の違い
「平成30年度 査察の概要」を読む前に、「税務調査」と「査察」制度を混同している人がいるので、違いを確認しておきます。
税務調査とは
税務調査は申告の内容を確認する調査です。「内容の確認」ですので、誰でも受ける可能性があります。
税務調査は、申告内容が正しいかどうかを帳簿などで確認し、申告内容に誤りが認められた 場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、是正を求めるものです。
一般的に黒字営業を継続している法人に対する調査は「3年から5年の間に定期的に行われる」と言われています。
いつ「税務調査」を受けるかわかりませんが、まじめに帳簿を作成し、適法な申告を心がけていれば、恐れることはありません。[/lnvoicer]
査察とは
「査察」制度は、次のとおり「悪質な脱税者に対して刑事責任を追及」するために行われる調査です。
査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。
年間で査察の着手件数は200件弱ですので、多くの人には関係ない制度かと思います。悪質な脱税をしていなければ査察を受けることはないでしょう。
[lnvoicer icon=”https://ar-kawabe.com/blog/wp-content/uploads/2015/06/1527_Ako_NC_31.jpg” name=”管理人”]税理士でも査察に立ち会った経験のある人は少ないかと思います。(毎年、書いていますが、私も査察に立ち会った経験はありません。)[/lnvoicer]税務調査を受ける機会が少なくなるかも?書面添付制度について
上記のとおり、税務調査は「申告の内容を確認するためのもの」ですが、できれば税務調査をうけたくないと思う人は多いかと思います。(やましいところがなくても何となく嫌なものです。)
そのような人向けだと思いますが、「税務調査を受ける機会が少なくなる可能性がある制度」(筆者の造語)が、平成13年度の税理士法の改正により創設されました。
「書面添付制度」と言われています。
この「書面添付制度」は、申告書に「税理士がその申告書等を作成するときに納税者と打ち合わせた事項、計算過程等」を記載した書面を添付する制度です。
税理士に依頼をしなければいけませんが、この書面添付制度を利用することにより、税務調査を受ける機会が少なくなる可能性があります。(いつか記事にしてみようと思いますが、私もこの制度を利用していますが、件数としては少ないです。)
■ LINK 国税庁;4 書面添付・意見聴取制度 Web
税務調査は、調査の実施日(1日~)以外にも資料を準備するなど、少なくても2日程度は時間をとられます。また、税務調査の結果が出るまでには、小規模な企業で1ヶ月半ぐらはかかります。
税務調査を受けなければ、調査のためのとられる時間をほかのことに充てられますので、顧問の税理士に書面添付制度の件を相談してみてはいかがでしょうか?(書面を作成するのに意外と時間がかかりますので、別途、報酬が発生すると思います。顧問税理士に良く確認してください。)
平成30年度の査察の概要を読んでみる
前置きが長くなりましたが、「平成30年度 査察の概要」を読んで、感じたことを記載しておきます。
重要事案への取組
「平成30年度 査察の概要」も前年までの査察の概要と同じく、1ページ目に概要が掲載され、集計表は後ろの方に掲載される形式でまとめられています。
2ページ目以降に「2 重点事案への取組」(※)が記載されていますので、確認していきます。
※ 平成29年度までは「社会的波及効果の高い事案への取組」という見出しでした。
● 無申告ほ脱事案
● 国際事案
● その他の社会的波及効果の高い事案
消費税受還付事案
消費税の輸出免税制度を利用した事例が掲載されています。
消費税の輸出免税を利用した悪質な脱税のケースは多いようですね。報道もありました。
令和元年10月には消費税率が変更されますので、このような事案は今後も増える(露見する。摘発件数が増える。)かも知れませんね。
無申告ほ脱事案
無申告のほ脱事案として、不動産取引に係る報酬を申告しなかったケースが掲載されています。
トピック5については、私も経験があります。(査察の対象になるような案件ではありませんが、税務署からの指摘で過去数年に遡って申告(期限後申告)をしました。)
このトピック5の件はどうかはわかりませんが、ファンクラブ等の運営者は「え、納めるの?」という感覚の人が多いかなと思います。
国際事案
国際事案が掲載されています。
国際事案は、平成28年と29年は減少していましたが、平成30年は増えました。
国際事案は、国内法だけでなく租税条約等も関係してくるのでとても難しい(摘発に時間がかかる)のではと思います。
その他の社会的波及効果の高い事案
近年、市場が拡大している分野における事案が掲載されています。
トピック8では、スマートフォンのデータを解析して、時間の解明をしています。(デジタルフォレンジックツールって知りませんでした。)
着手・処理・告発件数、告発率の状況
平成30年度 査察の概要によると、平成30年度の着手件数はここ5年間では一番少なく、処理件数や告発件数もここ5年間で最少となっています。
脱税の手口が巧妙になっているので、1件にかける時間が多くなり件数が減少しているのでしょうか?
脱税額の状況
平成30年度の告発分の脱税額の総額は平成29年度に次いで、ここ5年間で2番目に多い金額です。
総額のうち1件あたりの脱税額が99百万円(9千9百万円)と昨年(1億円)とあまり変わらないことから、1件あたりの脱税額が多くなる(手口が巧妙化し規模が大きくなる)傾向なのかも知れません。
告発の多かった業種
平成30年度も平成29年度、平成28年度と同じく「建設業」の告発事案が多かったようです。(不動産業も多いですね。)
不正資金の留保状況及び隠匿場所
不正資金の隠匿場所は、あいかわらず身近な場所です。
平成29年度の記事に「仮想通貨を購入する人はいないのだろうか?」と記載しましたが、平成30年度では「暗号資産(仮想通貨)」との記載があります。
脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていましたが、そのほかに、有価証券や不動産、暗号資産(仮想通貨)、ブランド品の取得費用、特殊関係人への援助資金、ギャンブル等の遊興費などに充てられていた事例もありました。
また、不正資金の一部が、海外の預金口座で留保されていたほか、海外における遊興費(カジノ)などに充てられていた事例もありました。
脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、
○ 居宅の床下収納の中(法人税法違反)
○ 居宅寝室のクローゼットの中(法人税法違反)
○ 代表者名義の貸金庫の中(法人税法違反)
に現金を隠していた事例などがありました。
まとめ
脱税の事案を知っておくのも経営者として誤った道に進まないために必要なことかも知れません。
■□◆◇ 編集後記 ◇◆□■
6月は外出が多いです。来週は新潟です。